インフルエンザワクチンはなぜすぐに作れない?2019年の供給量は?

健康

もうすぐインフルエンザ予防接種の季節ですね。

毎年、数が足りないとか入荷が遅いとかニュースになっていますが、

どうやら今年のインフルエンザワクチンの供給は問題なさそうですが、

薬なのになんですぐに作れないの?」と思ったことはありませんか?

今日は、インフルエンザワクチンはなぜ大量に作れないのか?

ワクチンが供給されるまですぐには作れない理由について書いてみます。

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インフルエンザワクチンは鶏の恩恵

インフルエンザワクチンは『生もの』、生物学的製剤です。それには「鶏」の存在が必要です。

卵がないとインフルエンザワクチンは作れない

「ワクチンの原料になるウイルス」は、1、2個の鶏卵からやっと大人1人分がとれます。1個の鶏卵から大量に作れるわけではありません。

ワクチン製造に使われるのは「孵化鶏卵」(ふかけいらん)という卵で、ひよこになる前の卵で、胚(はい)を成長させた卵です。

「ウイルスは生きた細胞に感染して増える」という性質を利用して、孵化鶏卵を使ってウイルスを増殖させます。

受精卵を37度に温めて発育途中の状態にし、注射針が通るくらいの小さな穴を開けます。この穴からインフルエンザウイルスを注射し、穴をふさいでウイルスを増やします。

そして鶏卵の中の「しょう尿液」に溜まったウイルス液を集めてワクチンの原料にします。

その後、ウイルスを精製・凝縮し、「感染性をなくして」インフルエンザワクチンになります。

インフルエンザワクチンの製造過程

インフルエンザワクチン製造は、その年の約半年前から始まります。

図と手順の内容は、デンカ生研(株)より引用しています。

①雛鳥を用意し成鶏まで育てる。約半年にわたって発育鶏卵を用意する

②発育鶏卵を消毒した後、10〜12日間ふ卵させる。

③検卵により一定の品質を満たす卵をワクチン製造用に使用する。

④選ばれた発育鶏卵の尿膜腔内にインフルエンザワクチン製造用のウイルス株を接種

⑤2〜3日間培養。培養が終了したら約半日間冷却してウイルスの増殖を中止する。

⑥その後、ウイルスが増殖した尿膜腔液を採取し、さらに濃縮精製する。

⑦精製したウイルス粒子を分解・不活化した後、規定の濃度に調製

⑧精製したワクチン原液に4株分(A型2種類、B型2種類)を混合し、各バイアルに小分けする。

⑨国家検定に提出

⑩合格した製品を順次包装出荷

これらの手順を経て、通常は8月まで製造して、8月から国家検定を受け、合格した製品を9月から包装・出荷されます。

国内のインフルエンザワクチンの製造メーカーは4社

国内のインフルエンザワクチンの製造メーカーは4社です。

1.北里第一三共ワクチン
2.化学及血清療法研究所
3.阪大微生物病研究会
4.デンカ生研

これらの製造メーカーがワクチンを製造しています。

製造してもロット単位の国家検定がある

上記にもあるように、ワクチンは製造されてもまだ販売できません。ロット単位国家検定を受けなければなりません。

インフルエンザワクチンは毎年作られる「生もの」なので、その品質について、その都度検定を受ける必要があります。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下本項において「医薬品医療機器等法」という。)第43条では、厚生労働大臣の指定する医薬品、再生医療等製品及び医療機器について、厚生労働大臣の指定する者の検定を受け、これに合格したものでなければ、原則として、販売、授与等を行ってはならないこととされています。

厚生労働省HPより

この検定に合格して初めて流通するのですが、ここでトラブルがあると予定していた供給がされずに「ワクチン不足」が起こります。

数年前、化血研(化学及血清療法研究所)というワクチン製造メーカーで不正製造・出荷停止問題があり、一旦検定を通過したワクチンも回収され、ワクチン不足となったことがありました。

インフルエンザワクチンはなぜ大量に作れない理由

これまで説明してきた通り、ワクチンを作るために製造メーカーはフル稼働でワクチンを製造しています。

雛鳥を育て、卵を産ませ、1日に何百万個、何千万個もの鶏卵を使ってウイルスを培養させ、ワクチンを製造しています。

ワクチンの製造には時間がかかるので、予定通りウイルスを培養できなかったり、何らかの理由で国家検定を通過できなかったとき、すぐに追加製造できないのです。

これが、インフルエンザワクチンはなぜ大量に作れない理由です。

2019年の供給量は?

今年の供給量(製造量)は、過去4年に比べて多くなり、納品時期も早くなりそうです。

供給量

厚生労働省HPより

供給量と納入時期

厚生労働省HPより

まとめ

今日は、インフルエンザワクチンはなぜ作り置きできないのか、製造過程について書いてみました。

インフルエンザの予防接種は、流行する前(12月中旬頃)までにしておくことが良いとされていますので、ワクチンを打つ方はお早めに。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考:

JAグループ福岡
http://www.ja-gp-fukuoka.jp/education/akiba-hakase/004/index.html

デンカ生研(株)
http://denka-seiken.jp/jp/special/factory/factory01.html

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