新型コロナ対策で、世間に消毒用エタノールが不足していることで、消毒剤として注目を集めているのが次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウムです。
最近、一部の報道で、次亜塩素酸水が新型コロナウィルスに効かないとか、次亜塩素酸ナトリウムは効果があるだとか、両方とも効果があるんだ、なんて声もあります。情報が入り混じっています。
効果あるの?ないの?結局どっち?
と言いたいところですが、調べてみるといろいろわかってきました。
今日は、名前がまぎらわしいこの2つの次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムについて、成分の違いや注意点、ニュースのネタ元などについて調べてみました。
6月25日追記
NITE(製品評価技術基盤機構)は、次亜塩素酸水の効果について以下の検証結果を発表しました。
以下、NITEの資料より。
(2)次亜塩素酸水は、以下のものを有効と判断しました。
・次亜塩素酸水(電解型/非電解型)は有効塩素濃度35ppm以上
・ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは有効塩素濃度100ppm以上
なお、今回の検証結果を踏まえると、次亜塩素酸水の利用に当たっては以下の注意が必要であることが確認されました。①汚れ(有機物:手垢、油脂等)をあらかじめ除去すること
NITE
②対象物に対して十分な量を使用すること
事の発端はNHKニュースから?
5/29のNHKニュースでこんな報道がありました。
「次亜塩素酸水」現時点では有効性は確認されず NITEが公表
NITE=製品評価技術基盤機構は、新型コロナウイルスの消毒目的で利用が広がっている「次亜塩素酸水」について、現時点では有効性は確認されていないとする中間結果を公表しました。
NHKニュース
専門家は、噴霧での使用は安全性について科学的な根拠が示されていないなどとして、注意を呼びかけています。
NITE(ナイト)とは?
NITE(製品評価技術基盤機構)は、機械製品、化学製品の検査をする経済産業省所管の独立行政法人です。
それに加えて、文科省が学校での噴霧の使用中止の通知※を出しました。
文部科学省は現時点で有効性がまだ十分確認されていないとして、子どもたちがいる空間では噴霧器での散布などは行わないよう教育委員会などに通知しました。
NHKニュース
(中略)
「次亜塩素酸水」は次亜塩素酸ナトリウム消毒液とは異なり、有効性はまだ十分確認されていないとして、子どもたちがいる空間では噴霧器での散布などは、健康面への配慮から、行わないよう求めています。
※2020年6月4日に文部科学省が出した通知がコチラです。
2ページ目の下のほう。
〇次亜塩素酸水の噴霧について
・次亜塩素酸水の噴霧器の使用については、その有効性及び安全性は明確になっているとは言えず、学校には健康面において様々な配慮を要する児童生徒等がいることから、児童生徒等がいる空間で使用しないでください。
これらのニュースが重なって、次亜塩素酸水が「コロナウィルス効かないんじゃないの?」という印象をあたえたのだと思います。
効果がない思われたのは「次亜塩素酸水」
次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水のうち、今回、新型コロナウイルスに対して効果がないのでは?といわれたのは、「次亜塩素酸水」のほうです。
次亜塩素酸ナトリウムはハイターなどに使われるもので、医療機関の環境整備用として日常的に使われています。
殺菌作用が強すぎるので、特に取り扱いには注意が必要です。
では、なぜ「次亜塩素酸水」は新型コロナウイルスに効かないといわれたのでしょうか?
まずは次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水の違いについて。
次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水の違い
まず、次亜塩素酸ナトリウムは、塩素系漂白剤などの主成分として用いられる、アルカリ性の物質で、従来から新型コロナウイルスの消毒に使われています。
一方、次亜塩素酸水は、電気分解などの手法で作られる酸性の液体で、新型コロナウイルスへの有効性については、現在検証中です。(6月26日NITEの最終報告により一定の条件下でその効果が認められました)
2つはpHが違います。市場に出ている次亜塩素酸水は弱酸性。次亜塩素ナトリウムは強アルカリ性。
次亜塩素ナトリウムは強アルカリ性。強アルカリ性は金属を腐食させたり、皮膚を溶かします。ハイターが手につくとヌルヌルしますが、あれは皮膚が溶けている状態です。
一方、次亜塩素酸水は弱酸性で、肌と同じpHなので皮膚にダメージを与えません。
さらに、次亜塩素酸水は定義がはっきりしないことや、作り方や濃度、保存方法によって効果に差が出ることから、効果について疑問視されるのだと考えられます。
次亜塩素酸ナトリウムは爆発するくらい危険
余談ですが、ハイターなどに使われる次亜塩素酸ナトリウムですが、これがいかにヤバイかわかる話があります。
次亜塩素酸ナトリウムは取り扱いによっては爆発するという話です。
1980年代に三重県四日市で、作業員が高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液をタンクに移し替える際にホースが外れ、水溶液を浴びてしまいました。
作業員は濡れた衣類を洗わずに日に干して乾かし、そのズボンをはいて歩いたところ、摩擦によって爆発が起き重体になりました。
これは、次亜塩素酸ナトリウムをセルロースを主体とする布地に浸み込ませて40~50℃に保って乾燥させると、不均化反応により爆発性の塩素酸ナトリウムに変わるため。
参照:株式会社A&T【いまさら、でも大切な『次亜塩素酸ナトリウム』について】
次亜塩素酸水は商品によって濃度もバラバラ。効果の持続性の問題も
除菌効果があるとして売られている次亜塩素酸水は成分や濃度もバラバラ。
さらに透明のボトルに入っているものや遮光性のある容器に入っているもの。
次亜塩素酸ナトリウムはそのつど希釈して使用するので保存できません。
一方、次亜塩素酸水は長期間ボトルに入って保管されていることもあります。
次亜塩素酸水の品質はいつまでも一定に保たれないので、その塩素濃度が低下していき効果が薄れていくといわれています。
次亜塩素酸水は新型コロナウイルスに対して効果があるのかないのか?
結論として、次亜塩素酸水の現状の認識としては、
NITEは「現時点で確認できていない」がまだ検証中で現時点ではハッキリと「効果がない」とは言っていない。
(6月26日追記)6月25日、NITEは
一定の濃度以上で十分な量を使用すれば有効
との報告書を公表しました。
一定の濃度とは以下の状態です。
・次亜塩素酸水(電解型/非電解型)は有効塩素濃度35ppm以上
・ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは有効塩素濃度100ppm以上
なお、利用に当たっては以下の注意が必要であることと付け加えられています。
①汚れ(有機物:手垢、油脂等)をあらかじめ除去すること
②対象物に対して十分な量を使用すること
ニュースは出どころを確認しよう
いろんなニュースに惑わされないように、ニュースは出どころを確認するようにしましょう。
NHKニュースの元になったNITEの報道発表はコチラです。
NITEが行う新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価に関する情報公開
https://www.nite.go.jp/information/koronataisaku20200522.html
第1回 2020年4月15日 → 効果認められず
第2回 2020年4月30日 → 効果認められず
第3回 2020年5月21日 → 効果認められず
第4回 2020年5月28日 → 効果認められず
第5回 2020年6月25日(最終報告) → 一定の条件で効果あり
4月から会議が開かれていて、その時の資料が随時公開されています。
ただ、6月27日に確認した時点では、このページの「よくあるお問い合わせ」の「次亜塩素酸水に関すること」の中の、「次亜塩素酸水」は、新型コロナウイルスに効果がないのですか?という問いに対しては、まだこのような回答のままになっています。
「次亜塩素酸水」の新型コロナウイルスに対する効果については、検証試験が継続中であり、まだ結論は出ていません。
今までのところ、新型コロナウイルスに対して一定の効果を示すデータも出ていますが※、5月29日現在、全体として有効性評価を行う上で十分なデータが集まっていないことから、委員会において、引き続き検証試験を実施することとされました。
※塩素濃度49ppm(pH5.0)で、20秒で感染力を1000分の1まで減少させた例がありました。
次亜塩素酸水の効果に対する論争
6月18日の新聞記事では、北海道大学などの研究者たちが次亜塩素酸水の有効性を訴えています。
北大、帯広畜産大学(北海道帯広市)の研究結果により、次亜塩素酸水の新型コロナウイルスに対する有効性が証明され、さらに弱酸性次亜塩素酸水を過剰噴霧した想定実験においても、人体に有害ではないとした。
高齢者住宅新聞
どっちを信じればいいの?って思いますよね。
残念ながら僕たち一般人にはこの次亜塩素酸水の本当の有効性について検証することも証明することもできません。
6月25日にNITEが次亜塩散水の効果は評価をしてその効果を認めましたが、噴霧については評価をしていません。
今後、どの考えが正しいとされるのかは現時点ではわかりませんが、今のところは国が発表する情報を「正しい情報」とするしかないでしょう。
まとめ
今日は次亜塩素酸水が新型コロナウイルスに効くのか効かないのかを調べて分かったことをまとめました。
次亜塩素酸水について今わかっていることはこの2点。
・次亜塩素酸水は、一定の濃度以上で十分な量を使用すれば有効。
・次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウムの噴霧について、文部科学省は噴霧は呼吸器に影響があるかもしれないからやめたほうがいいと言っているが、NITEは噴霧が有害か無害は何も言っていない(評価を頼まれていない)。
ニュースソースはできるだけ出どころを確認して、正しい情報を集めるようにしたいですね。
最後までお読みありがとうございました。
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