こんにちは、Naraoです。
最近、よくyoutubeで書評動画を見ています。本屋さんに並ぶ新刊コーナーや話題の本は気になりますが、全部読む時間はないので、気になったタイトルがあるとyoutubeで検索して、複数の人の書評を見たりします。感想や要約のしかたは人によって違うので、同じ本の解説でも何人かの動画を見ると参考になります。
そこで、今回いろいろな動画を見て気になっていた「AI vs 教科書が読めない子供たち」を読んでみました。
この本は、2019年ビジネス書大賞を大賞した本で、中高生のお子様がいらっしゃるご家庭の親にはぜひ読んで欲しい本です。
著者について
著者の新井紀子さんは、「国立情報学研究所」の教授であり 「教育のための科学研究所」の所長という方です。
2011年から始まった人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」という、 東大合格を目指すAI 「東ロボくん」プロジェクトに携わってきた数学者です。
「東ロボくん」プロジェクトを通じて行った経験を元に、 人間にとって、人間らしい読解力や意味理解を深めることが今後はもっと重要になると考え、2016年からは読解力を診断する「リーディングスキルテスト(RST)」を実施、中高生の読解力向上のために活動されています。
このあたりは本の説明欄にもっと詳しく書かれているのでご参照ください。
AI vs 教科書が読めない子供たち【要約】
自分なりにまとめた本書の要約です。
数学者として「東ロボくん」の研究にかかわってきた結論として、人工知能(AI)は人間を超えないし、AIの進化が人間のそれを上回るとされるシンギュラリティ(技術的特異点)は起こらない。
AIは「計算機」なので、数式化できないことはAIにはできない。人間は「文脈を理解すること=意味を理解すること」ができるが、AIにはそれができない。つまり「意味」を理解できないことがAIの限界。
AIが最も不得意な「読解力」。 人間がAIより優れているのが「読解力」であるはずなのに、調査をしてみると教科書が論理的に読めない、読解力が身についていない中高生が多いことに驚愕した。
AIは人間を超えないが、これから数式化できる仕事はAIに代替され失業者は増えるだろう。
今後、AIにはできない仕事が人間の仕事として残るが、読解力がない人間は仕事に就けず失業するか超低賃金で働くしかない。人手が足りないのに失業者があふれるようになる。ホワイトカラーは分断されるだろう。
RST(リーディングスキルテスト)を普及させ、日本人の読解力UPに貢献するのが自分の責務である。
これから起こる仕事の変化
歴史は繰り返す
技術の向上やニーズの変化によって、それまであった仕事がなくなったり新しく生まれることはこれまでも起こってきました。そして、そのたびに労働者に求められる能力も変化してきました。
本書によると、 産業革命以前の工場では多くの労働者が働いていましたが、工場の大規模なオートメーション化により、多くの工場労働者が失業 、その結果新しい職種として、ホワイトカラーが生まれたのだとか。
新しく生まれたホワイトカラーという労働形態が生まれたのだから、みんなそのジャンルで働けばいいのでは?と思うかもしれませんが、街中は失業者であふれていたそうです。
なぜ工場労働者はホワイトカラーになれなかったのか?
その理由は、工場労働者の多くがホワイトカラーとして働ける教育を受けていなかったからです。
当時の工場労働者の多くは、ホワイトカラーとして必要な、法律の知識や交渉術や計算能力など、ビジネスを進めていく能力が身についていなかったのです。
「目覚まし」という仕事
本書を読んで初めて知ったのですが、「目覚まし時計」が発明される前のヨーロッパでは、「目覚まし」という仕事があったそうです。
竿で窓をたたいたり、吹き矢で豆を飛ばしたりして起こすのが仕事だったとのこと。
また、長時間労働の工場では、労働者の娯楽のための本の読み聞かせの仕事がありましたが、オルゴールやレコードの発明によって衰退していったとも書いてありました。
今では想像できない仕事です。
これからも今までの仕事がなくなり、新しい仕事が生まれてくるのは間違いありません。
100年後僕はこの世にはいないので、今ある仕事のうち「そんなことやってたの?」と言われる仕事は何なのか、みなさん興味ありませんか?
読解力がないのは子どもだけ?
本書の中で著者は、「東ロボくん」の研究開発中に全国の小中高生を対象とした「読解力テストRST(リーディングスキルテスト)」を行い、その結果「多くの中高生に読解力がないことを知り危機感を感じた」と書いています。
RSTは教科書を正しく読み取れるかどうかを試すテストですが、例えばこんな問題です。
どうでしょう?
わかりましたか?公立中学校の正答率9%でした。
正答と回答率は一番下に貼っておきます。
でも、読解力がないのは今の中高生だけでしょうか?
指示の意図が読み取れない部下や、話を聞かない上司。こんな大人たくさんいませんか?
これは単に「理解力」だけの問題でしょうか?
ビジネス文書や資料を読み解く、「大人版RST」の実施も期待したいところです。
人間の脳はAIよりまだまだハイスペックだ!
AIが進化したとはいえ、人間の脳にはAIをはるかに凌ぐスペックがあります。
この文章は、 出典不明ですが ネット上に出回っている有名な「読めてしまう文章」です。
こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっかにんんげ は もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっればじばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる というけゅきんう に もづいとてわざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?
人間の脳は最初と最後の文字がわかると、推測して文章を理解してしまうそうです。
この文章が読めてしまったとき、僕は「人間の能力スゲー!」と感動してしまいました。
個人的な考え
これは、AIが人間を超えられない理由についての個人的な考えです。
現代医学では、まだ人間の体のしくみについてほとんど知らないと言われています。脳科学の分野においても同じで、まだまだ分からないことだらけだそうです。
人間という生命体はたとえ生まれたての赤ちゃんでも、AIよりもはるかに複雑にできています。
人間自身が知らないことをAIに計算式としてプログラムすることは不可能です。
そして、生命体の活動の源泉は「欲」です。
赤ちゃんは快・不快から始まる「欲」を生まれながらに持っています。
AIはプログラムされた命令の範囲のことはできても、AI自身が「ああしたい。こうなりたい」という「欲」を持つことはありません。もし、AIに「欲」が芽生えたとき、人間の世界は終わりを迎えると思います。
生命体と機械の決定的な違いである「欲」がない限り、AIには新しいことを生み出すことはできないのだと考えます。あくまでも個人的な考えですが。
これからの世の中、働き方を子供にどう教えるか?
2020年から小学校でプログラミング学習が始まります。
文部科学省では、プログラミング学習が必須な理由を「手引き」に記載しています。
その中には「プログラミング教育は子供たちの可能性を広げる」と書かれています。
プログラミング教育を通じて、「情報活用能力」の育成や情報手段(ICT)を「適切に活用した学習活動の充実」を進め、「思考力・判断力・表現力等のプログラミング的思考を養う」とのことです。
プログラミング的思考とは
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていくこと
ただ、論理的に考えるためにもまずは「読解力」があることが前提になります。前提がなければ成り立たないという、著者の指摘のとおりです。
ニュースでは「小学校でプログラミング学習が始まる」という見出しばかりが目を引きますが、この手引きでは、 「学習指導要領改訂において、小・中・高等学校を通じてプログラミング教育を充実すること」と書かれています。
小学生の子供がいない家庭にはあまり関係ないかなと思っていましたが、今後、中学や高校でもプログラミング学習は関係がでてきそうですね。
自分自身の仕事もこれからどうなるかわからない上に、これからの世の中、働き方を子供にどう教えるかは、親にとっても考えていく必要がある課題です。
まとめ
以上、新井紀子著「AI vs 教科書が読めない子供たち」の【超要約】と感想でした。
最後に、先ほどの問題の解答と正答率を貼っておきます。
国立情報学研究所のHPの「リーディングスキルテストの実例と結果」の全文はこちらからみることができます。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント